のぶゑadtechへの道

のぶゑ アドテックへの道 episode.2第1回 LGBT座談会(後編)

2016.05.31

のぶゑ アドテックへの道 episode.2
第1回 LGBT座談会(後編)

社員一人ひとりがその能力や個性を最大限に活かしていきいきと働くことができる環境整備を進め、多様で自由な発想を持って生産性を向上することで自社の競争力強化につながる価値創造を行うため、ダイバーシティ経営を推進しているペンシル。その一端を担い、ペンシルのダイバーシティモチベーターとして、週1回気づいたらいつの間にかオフィスにいて、いつの間にかいなくなっている存在が「あなたの のぶゑ」です。
のぶゑはペンシルのコンサルタントでもなければ、マーケターでもありません。そんなのぶゑが「アドテック東京」に出ることになりました。「アド」でも「テック」でもないのぶゑが、日本のトップマーケターたちになにを伝えられるのか。これは、のぶゑのアドテック本番までの道を綴った記録です。

第1回LGBT座談会(後編)

座談会の様子

5.7兆円。

LGBT層の商品・サービス市場規模として試算された数字です。
一見すると、とても大きな市場。中にはマーケティング用語で競争のない未開拓市場を指す「ブルー・オーシャン」になぞらえて「レインボー・オーシャン」と表現する人も。

同性愛者には富裕層が多く社会的地位も高い。
私たちはそんなイメージを鵜呑みにしていいのでしょうか。

盛り上がりを見せつつあるLGBT市場に対し、LGBTを商売として見られることへの戸惑いの声や、どんな方法にせよLGBTという存在が広まることはいいことという肯定の声など、様々な意見が聞かれています。

後編では、外からでは見えない、一当事者としての本音を伺いました。

LGBT座談会のメンバー

中島晶さん:バイセクシャル、古野ひとみさん:アライ(支援者)、小谷さん:クエスチョニング アセクシャル(無性愛者)、黒部美咲さん:トランスジェンダー 性同一性障害(MtF - 性を男性から女性へ移行したい/した人)、鈴木さん:トランスジェンダー(FtM - 性を女性から男性へ移行したい/した人)、牧園祐也さん:ゲイ

LGBT座談会でぶつけた質問

LGBT当事者・支援者の6名に大きく4つの質問をぶつけてみました。
後編では、「LGBT市場に対する意見」「LGBTフレンドリー企業」について、当事者の本音に迫ります。

1 LGBT当事者として困っていることって? ゲイ、トランスジェンダーなどそれぞれの立場でもっとこうなったら生活しやすいなど 2 消費者としての意識を聞いてみたい! ○○な理由でこの商品・サービスを選んだ(買い物をする際の意思決定要因)こんな商品・サービスがあったらいいなLGBTとして買いにくい商品、使いにくいサービスなど 3 5.7兆円とも言われる「LGBT市場」への注目が高まっているが、当事者としては実際どうなの? 4 企業がどんなことをしたらLGBTフレンドリー企業だと感じる?

いよいよ、本編にイクわよ!

〜 3 〜
5.7兆円とも言われる「LGBT市場」
への注目が高まっているが、
当事者としては実際どうなの?

当事者は高所得者と低所得者に二極化。でも実は大半が低所得者。

牧 園
声を大にして言いたいけど、みんなLGBTが金持ってると思いすぎ!こっちは低所得者ですよ(笑)
ペンシル
でも、メディアではお金を持っているという風に取り上げられることが多いですよね?
のぶゑ
例えば、ゲイカップルが二人で生活してると可処分所得が多いから、豪華な旅行に行けたりするんだよという話をよくされるけど、そんなことできるカップルはごく一部ですよ。
中 島
そうやって考えると、レズビアンのカップルはプア同士ってことが多いですよね?
のぶゑ
多い、多い。でもいろんなことを見てると、ゲイでも同じで二極化してる感じはするんですよ。中間層があんまりいなくて、お金持ちもいるけど、ほとんどの人が決して裕福ではないですよ。特にトランスジェンダーはいろんなものに出費がかさむし、性移行するだけでも多額の費用がかかるから、それでまた就職率が下がったりして低所得者になってしまう可能性が高いからね。自分で事業をしたり正社員として働いている人たちは、ある意味成功者で、ほとんどがパートや派遣社員にならざるを得ない人たちが多いですよね。
黒 部
まだパートでも仕事がある方はいいですよ。就職すらできない人や生活保護を受けている人も多いんです。
小 谷
企業側が受け入れてくれないんですか?
のぶゑ
トランスジェンダーに関していえば、自分が性移行を行うことを会社に言う際、会社が受け入れてくれなければ辞めるしかないんですよね。性移行して、新しい姿で就職活動をしても会社に受け入れてもらえないことが多くて、書類審査で落ちてしまったりとか、面接までいっても自身の性のことを説明すると「うちではちょっと・・・」と言われてしまいます。そうすると住民票や履歴書などを出さなくてもいいような仕事にしかつけなくなってしまう、ということはよく聞きます。

LGBT向け結婚市場はまだ様子見。

牧 園
のぶゑさん、ブライダル事業やってますよね?いまLGBT向けのブライダル事業を始める人が多いですよね。この前カフェにいたら、後ろの席の人たちが「LGBT向け結婚市場が狙い目じゃない?」と話していました。狙い目じゃない!と思いましたよ(笑)
のぶゑ
狙い目じゃないですよね!少ない、少ない!
小 谷
そうなんですか?増えるかなと思ってましたけど。
のぶゑ
今後増えるかもしれないけど、現状まだほとんどの人がじーっと様子を見ている状態だと思います。だって婚姻関係にもならないのに、ただ単純に結婚式を挙げるだけで100万円も払うわけですよ。それなら車を買おうよ!という話になりますよね。あと数年で変わるかもしれないとなれば、婚姻関係が認められるまで待とうと思っている人もいるだろうし、ここ2、3年はあんまり動かないと思います。

座談会の様子

LGBT市場に高まる関心には疑問の声も。ただし、当事者の存在は大きい。

牧 園
にわかLGBT支援者が最近超多くて、みんな目が「¥」になってますよ(笑)もういっぱいいるよ!
のぶゑ
LGBTがすごくお金を持っているというイメージを抱いている方が多すぎて。ビジネスで広めるのは構わないんだけど、ちゃんと理解してよねって思いますね。
鈴 木
確かに僕も思いました。タイで性適合手術のツアーをやっていたときに、他社からどうしたら集客できますか?と聞かれたけど、いくら医療通訳者がいても当事者がいない会社は選ばないと思います。研修だけじゃなくて、カミングアウトしてもいいという社員がひとりでもいて、その人が担当になればお客さんも相談しやすいですよね。企業はマーケットを狙っているのかもしれないですけど、お客さんはお金を持っている方が少ないですし、手術代も安くないのでローンを組む方もいます。小さい工夫があるだけで、お客さんはすごく安心してくれますね。
黒 部
MtFは化粧品にすごく困っているから、店頭で相談できるのがMtF当事者となると「あ!あそこのお店行こう」となるのは当然のことかもしれません。

当事者の積極採用の打ち出しは好意的!企業イメージがアップ。

のぶゑ
企業と色々話をしてると、「LGBTと言ってくれればうちは大丈夫ですけどね」と言われるんですよね。私が「いや、言えませんよ」と言うと、会社は「なんで言えないの?うちはウェルカムなのに」という反応をされる。いやいや、LGBT支援ってうたってないのに!(笑)うたってても言えない人がほとんどなのにね。
黒 部
企業としても当事者の積極採用をうたうのはすごく大事。企業イメージが上がるし、実際に経済効果もあると思います。
古 野
当事者の採用に関しては、アメリカではLGBTの受け入れを積極的に行う企業と大学がコラボレーションして就活イベントを行っているそうです。そのような取り組みも効果的だと思います。

5.7兆円はニュービジネスではなく、衣食住の生活費では?

ペンシル
5.7兆円と聞くと、新しいビジネスが生まれるの?と思いますけど、実際どうなんでしょうか?
のぶゑ
違うよね。もしニュービジネスと考えるならば、ウェディング市場が開拓されるとか、生命保険会社全体が動いて生命保険の新しい世界が開くとか、葬式や介護もあると思います。でもそれは5.7兆円には入っていないものだから、未知数でどこまで動くか分からないんですよね。5.7兆円は衣食住の生活費ですよ。

5.7兆円とも言われる「LGBT市場」
への注目が高まっているが、
当事者としては実際どうなの?
〜 まとめ 〜

当事者は高所得者と低所得者に二極化。でも実は大半が低所得者。 LGBT向け結婚市場はまだ様子見。 LGBT市場に高まる関心には疑問の声も。ただし、当事者の存在は大きい。 当事者の積極採用の打ち出しは好意的!企業イメージがアップ。 5.7兆円はニュービジネスではなく、衣食住の生活費では?

のぶゑとペンシル後日談。 LGBTビジネスなんて言われるけれど、LGBTの存在が世の中に広まることはありがたいと思うわ。 「5.7兆円」と聞くとその市場規模に目が行きがちだけど、それだけ多くのLGBTがいるということを知っていましたか?という問いかけじゃないかしら。 LGBT市場でのシェア拡大のために、企業が今すぐ実践できるような取り組みを当事者の意見を聞きながら探したいわね。

〜 4 〜
企業がどんなことをしたら
LGBTフレンドリー企業だと感じる?

さりげないLGBT容認。

牧 園
最近、ある会社の商品CMに結構感動して。CMにさっと男性同士のカップルが出てきたり、メインの広告も女の子同士がひざまくらしたり、すごくさりげない感じがしました。僕それまでその会社のこと嫌いだったんですけど、そのCMを見て商品買ったし、企業イメージが変わったんですよ。そういうことじゃないかな?
のぶゑ
一番はナチュラルにLGBTフレンドリーであることをどうアピールするかということだよね。
牧 園
そのCMはレインボーマークとか何も入ってないし、男性同士が抱き合うシーンがさっと出てくるだけだけど、すごくいいなと思いました。

会社や商品に応じてアピール方法を変える。
大事なのは、全社員にLGBTフレンドリーの方針が浸透していること。

のぶゑ
あとは売るモノによるのかなと思います。美容部員にMtFを採用してLGBT支援やってますよと積極的にアピールする商品もあれば、ナチュラルにアピールする商品もあります。両方あるのかなと思うんですよね。
先程の会社のようにあらゆる商品を扱う企業となると、LGBT支援を強調しなくてもいいという気がします。そうすると企業イメージとしてLGBTフレンドリーを訴えるときに、CMなどを使ってナチュラルに表現するのは1つの方法だと思いますね。企業や売るモノによって表現の仕方は違う気がするな。
牧 園
LGBTの人たちもいる社会という目線があるのかどうかは大事ですよね。化粧品のように、当事者が困っているニーズがあって、そこにピンポイントでアピールする方法も1つだということですよね。
のぶゑ
そうそう。MtFや移行中の方の仲間が集まるニッチなところをダイレクトにアプローチする感じになると思う。
ただ、あまりにナチュラルになりすぎると、誤解を生む可能性があるかもしれません。例えば、化粧品メーカーがレズビアンカップルをポスターに起用したときに、それを見て同性愛者やトランスジェンダーの人たちが「ここに行けば受け入れてもらえるかも」と思ってショップに行ったけど、きちんと売り場の社員まで行き渡っていなければ受け入れてもらえないということが起きる可能性がありますね。
黒 部
その通りですね。私は過去にダイバーシティ推進をうたった化粧品会社の面接を受けたんですけど、面接ではとても受け入れてくれる感じがしなかったことがあります。結局社員に浸透していないと、そういう扱いを受けることになってしまいます。
のぶゑ
自然にやり過ぎちゃうと、そういう危険性もはらんでいるわけですよね。売るモノによってだいぶ変わる気がして、逆に保険やウェディングは積極的にアピールした方がいいような気がします。

座談会の様子

ただLGBTフレンドリーと宣言する企業は嫌!
当事者を理解して考え抜かれた商品に安心感。

黒 部
あとはやっぱり、当事者がいる会社かな。
ペンシル
当事者を雇えばLGBTフレンドリー企業なのかというと、そうではない気がしますが。
のぶゑ
もちろんそれだけではないです。当事者を雇うだけでなく、研修などを通じて企業全体の理解が必要です。ろくに研修もしてないのに、フレンドリーですと言われるとイラッとしますね。 ほかにも、生命保険会社のようにLGBT向けの商品を打ち出してくれる会社は、色々考えた結果その商品を出しているということが背景として見えてきます。そういう企業は私たちも安心できるし、自分たちができることとできないことを判断して、できる範囲でここまでやってくれたとか見えると、すごくフレンドリーと感じますよ。

企業がどんなことをしたら
LGBTフレンドリー企業だと感じる?
〜 まとめ 〜

さりげないLGBT容認。 会社や商品に応じてアピール方法を変える。大事なのは、全社員にLGBTフレンドリーの方針が浸透していること。 ただLGBTフレンドリーと宣言する企業は嫌!当事者を理解して考え抜かれた商品に安心感。

のぶゑとペンシル後日談。 前編でも意見があったけど、当事者の多くは買い物をする際に、事前に企業のWEBサイトをチェックするから、サイト上でLGBTフレンドリーであることをうたうことは効果的だと思うわ。 それから店頭にレインボーマークやジェンダーフリーの表記があれば、当事者はさらに安心できるし、そういう配慮をしてくれるお店はニーズが高いと思うわ。 当事者を理解した上で商品を販売してくれるのは嬉しいわ!それに加えて当事者の意見を取り入れた商品の開発も面白いんじゃないかしら。

止まらないのぶゑはアドテックで

前編と後編の2回に渡り、「第1回LGBT座談会」の様子をお届けしました。LGBTというと同性愛者(ゲイ・レズビアン)のみが取り上げられることが多い中、トランスジェンダーやバイセクシャル、アセクシャルも含め、それぞれの立場からそれぞれの意見を伺うことができました。

2時間あれば余裕だろうとスケジュールを組んだ我々の考えは甘く、座談会当日は話が尽きることがありませんでした。気がつけば3時間が経過し、半ば無理やり終わらせた形に。それだけLGBT当事者は言いたいことがたくさんあるということ、そして知って欲しいということなのかもしれません。会社の同僚、よく行くお店の店員、同じ電車で通勤する人の中。LGBT当事者は当然に存在しています。LGBT当事者に「会い」「声を聞き」「知る」ことで見えてきたこと。座談会では話足りない!と漏らすのぶゑより、アドテック本番で語られます。

see you around!

次回は、のぶゑが講師を務めた
株式会社プリンセススクゥエアー様での
LGBTセミナーの様子や、
2016年5月18日に開催されたPED×Hakataの登壇レポートをお届けします。

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