シニア世代をちょっと深堀り
ダイバーシティ経営を目指すペンシルには、シニア世代も働いている。シニアといっても60代中盤。それも、ITなどにも興味や関心がある方々だ。欲もある。好奇心も衰えていない。そういうシニアの方々の「働くホントの目的」を聞き出そうとグループインタビューを試みた。
新型コロナウイルス禍によって加速した働き方改革。在宅型のリモートワークにシニア世代は、どう適応していくのか!?という答えも少しばかり聞き出せたのでレポートする。
有限会社ペーパーカンパニー
代表取締役 中村 修治
メンバー
金森 洋介
PIC天神
大手電機メーカーで新卒から定年まで勤め上げ、東京での長年の勤務のあと故郷の福岡に戻り、2016年、62歳で、アクティブシニアスタッフ第一号としてペンシル入社。
森村 茂美
PIC壱岐
壱岐市役所で30年間勤務。2017年にペンシルに入社し、米づくりや野菜づくりをしながら、「半農半IT」な働き方を実践中。「ペンシル米」の生みの親。
坂元 正博
PIC壱岐
小学校教員として38年間、教育委員会や校長として勤務。公務員ではない、全く違う仕事がしたいという思いで、2018年、定年後にペンシルに入社。
多田 けい子
PIC天神
システム会社で25年間、テレマーケティングや営業事務などを経験し、50歳で退職。専業主婦として子育てに専念した後、2018年、ペンシルに入社。
シニア世代の働く、ホントの目的。
とあるアンケート(※)では、一般的なシニア世代の働く目的として、「現在の生活のためにお金が必要だから」という回答が最も多かった。つまり「お金」である。現在の暮らしの足しにしたい。さらに貯蓄がしたいからとの回答が、全体の70%近くになる。しかし、IT関連の仕事に関わっていたと考えるシニア世代の「働く目的」は、それらの経済合理的な理由とは異なる。代表的な意見をピックアップしてみる。(※アデコ「働くシニアの意識とシニアの雇用に関する調査」)
- 森村
- 働く目的は、時間がもったいないから。じっとしておけない、朝5:30に起きて、田んぼをみてやっている。時間を有効に使いたいと思っている。そして、ペンシルではスキルアップをしたい。少しでもITの知識を身につけたい。事業部メンバーの言葉が理解できない。それを理解したい。
- 坂元
- 38年間、一心不乱で働いてきたので、退職したら自由に過ごしたかった。周囲から、65歳になるまで、完全な年金もらえないから、つなぎで働いたほうがよいのでは?とか、家族からは、せっかく培った技術・ノウハウを活かしたらいいのでは?といわれた。
- 認知症予防:外部に出てコミュニケーションをとって、健康的な予防をしたい。
- 規則正しい生活習慣の維持:何をしようと自由っていうより、決まった時間・行動にする。
- 小遣いくらいは稼ぎたい:趣味がいろいろある。マラソンは体力維持のためで趣味じゃない。メダカの養殖(タマゴをとって育てる)。自分で稼ぎたい。旅行とか遊ぶお金も。ペンシルで働いて、維持していきたい。
- 多田
- 大学生だった子どもが今年から就職はしたけど、まだまだお金がかかる。生活のため。仕事上、パソコンは使ったりしてたけど、インターネットで買物したときに怖い目にあったり、失敗したりした。仕事の内容がインターネットに不安を感じるシニアの不安要素を取り除くことなので、それならば詳しくなくてもできるかなと思ってやっている。
娘とはLINEもしているし、一緒に画面をみながらお弁当食べたりしてる。インターネットって便利だなと思うし、仕事してなかったら、そういうこともできなかったかも。
- 金森
- お金のため。それ以外の収入もあるから、今すぐに困ってるわけじゃないけど。高度成長期に就職し、時代の流れの中でマンション含めて3回家を買って、2回売った。住宅ローンが残っている。その間は働いて収入を得ておかないといけないかなと思っている。年金も今年から満額になったし、多少の貯蓄もあるので、生活に困るわけではないけど、借金は返さないといけない。
明確に「お金のため」の答えたのは4人中1人。この答えの中でも「時間がもったいない」というのは、この世代にとって本質的な働く目的ではないだろうか!?と考える。
きっとシニア世代ほど「濃密な時間を過ごしたい」という願望がある。それが高度成長を支えてきた世代の特性でもある。「お金より時間」。「時は金なり」と生きてきた世代にとってのリタイア後は「時こそゴールド」なのである。
一般的なシニアの世代とITの関係。
シニア世代の再就職場所がWeb関連の会社というのは、どうやら希少なケースのようである。そこで、周囲のお友達の状況をお聞きしてみた。これが一般的なシニア世代の実情なのかもしれない!?
- 森村
- インターネットのことを聞きにくるのは、働いてない人。田んぼとか野菜を作るとかはみんなやってる。田んぼで作ったものを食べる。ネットを使っている人自体が少ない。携帯はほとんど持ってる。スマホも多い。スマホは電話利用が主な目的で、買物をするとかは聞いたことない。地区を見回しても、独り者が多い。結婚してないとか別れたとか。家も片付いてないとかそういう人も多い。
- 坂元
- 私の周りは、仕事によってはまだ70でも働いている、技術的な仕事。花を作るとか野菜を作るとか別の仕事をする人もいる。LINEは使ってるし、スマホも使っている。ガラケーを使ってる人もいるけどね。
女性はスマホで化粧品や洋服とかを注文する人もいる。田舎だから使ってないわけじゃない。公務員の人たちはパソコン使えるけど、それ以外の人は自宅にパソコンがないっていう家もある。
- 金森
- 入社したときはホストコンピューターだったから、パソコンになったのは30代。1人1台になったのは40歳頃で、Windows95が出てきたくらい。
- 坂元
- 私もそうですね。40付近でパソコンがあった。
- 金森
- そこから20年間はパソコンがないと仕事ができなくなっていった。
- 中村
- ということは70代が微妙ってことですね。80代はまったく使ってないかもしれない。Windows95が起点になってるとしたら、いま65歳前後ってことですね。
- 金森
- 30代の4〜5年は試行錯誤だったけど、そのあとはExcel・Word・メールを使わないと仕事にならなかった。私の家内は仕事のときはワープロはあったといってるけど、パソコンはなかったそうで、今でもパソコンは使わない。スマホは使う。子どもに習ってスマホを使えるようになっている。
これは、大きな発見である。シニア世代にとって「Windows95」の登場と、その利用年数がリタイア後のITリテラシーの基盤となっている。要は、1995年にどんな仕事をしていたか!?が、その後の人生に大きな影響を与えているということになる。40代で1995年を迎えたか!? 50代、60代で1995年を迎えたか!? この差は、大きい。
インターネット通販、実際の利用は?
ペンシルで働くシニア世代である。「インターネット通販をよくしますか!?」という問いには、なかなかユニークな答えが返ってきた。
- 坂元
- しますね。メダカも買います。マラソン関連のものなどもインターネットで購入する。よく使います。退職してから、スマホを買ったし、インターネット通販もはじめた。それまでは不安だった。情報漏洩とかクレジットカードの登録・会員登録とかそこまでするかなというのがあるから。YouTubeはみたりするけど登録はしてない。
- 森村
- ネット通販はほとんどしない。芋の苗とかは代引で買うくらい。クレジットカードも作りたくない。知り合いにいわれて作ったけど、今は良かったと思ってる。博多に買物に行った時にクレジットカードを初めて使った。買物は体に染み付いてて、代引・現金がメイン。どうしてもってものは嫁に頼んでいる。
- 多田
- ネットばっかり。子どもが椅子がほしいといったので、たくさんいろんなところをみて買いました。1時間以上かかる。下調べから価格調査して、レビューとかも全部みたりするので。勉強しながら、時間がかかる。
- 金森
- インターネット通販します。ネット以外で買うことはほとんどないかも。ユニクロとかはネットで買って店舗で受け取る時もある。趣味はあまりないけど、ゴルフクラブとかカメラとかはネットで買う。実物みないとわからないものや衣類とかは、お店で現物をみて、あとでネットで買う。
クレジットカードは10枚くらい持ってるが、ふだんよく使うのは2、3枚。さほど不安感はなかった。個人情報なんて結構漏れていると思ってるし、悪用されたとしても利用制限があると思うので、あまり意識しない。
インターネット通販でモノを購入するということにおいては、なんら抵抗がないシニアだっていることがわかる。同窓会名簿に、住所も電話番号も掲載されていた世代である。個人情報の漏えいに対する危機感も、実は、思ったほど高くない。
コロナ禍で変わったことは!?
新型コロナウィルスによる外出自粛生活や、それに伴うリモートワークの出現によって、実際の暮らしは変わったのか!?
- 金森
- 家内は専業主婦で、以前はクレジットカードも利用してなかったが、この機会に持ちはじめた。スーパーのカードに入るとポイント割引できるのを実感し利用が増えた。コロナ拡大してもシニアは現金を使うから、とにかくレジーで時間がかかる。時間が早い列は若い人が多く、クレジットカードを使っている。
- 森村
- 嫁はクレジットカードをバリバリ使ってる。嫁も仕事から戻るのが遅いし、お互いに忙しい。
- 坂元
- 壱岐は夫婦連れの買物は少ない。
- 金森
- 福岡は夫婦連れが増えてる。コロナ以降は特に。在宅勤務も増えてて、近くに一緒に弁当を買いに行くとかも増えていると思う。コロナについては最初の2ヶ月間くらいは、大したことない感じだったけど、シニアの死亡率の高さや志村けんさんとか有名人がなくなったことが大きかった。
現在も感染者が増えてきて、気をつけなきゃと思う。でも今後、いろいろなビジネスとつながると面白いなと思ってる。
- 中村
- シニアが感染したくないから、インターネットやWebに向かう意識・時間が高くなるだろうから、ってことだよね。
- 金森
- そう。リテラシーも上がるだろうし、家内もパソコンに興味を持ちはじめている。ポイントは、シニアは長く生きてる分のノウハウ・経験値があるし、凝縮されている。それを開放される機会を作ると若い人のためになる。手段がわからないだけ。
- 多田
- コロナのせいで買いたいものが買えないとかがあって、パソコンで探したりが増えた。ネット上で調べたり、それをやりはじめたら、デパートを利用しなくても自分で購入できることを覚えて、そっちの方があってるかなと思ってる。今後もそうなっていくと思う。
- 森村
- 壱岐は田舎なので、スマホをもってるけど、使いこなしてない人がいる。使い方とかセキュリティとか田舎独特のものがあるので、教える機会をつくったらいいかなと思う。怖くないんだよっていうのを教える。
- 坂元
- 私もオンラインをシニアが活用したらいいなと思う。ゆずなどを作っている70歳の人にインターネットで売ったらいいのでは?といったことがあって、「インターネットをはじめたらいろんな大変なことがある。配送とか24時間受付だったり対応力だったり、不安とかいろいろある。難しいこともある」といわれたことがある。そういう体制も必要だなと思います。
- 中村
- ちゃんと仕組みを作るとクリアできることもあるのかなと思います。良い機会でした。次からはお友達も入れたい。この属性じゃない人たちも入れていきたい。
- 金森
- 専業主婦の方とかね。2回目やりたいですね。
さいごに
人生100年の時代である。高度成長期も、バブルも、リーマンショックも、すべてを経験してきたのがシニア世代である。100年に一度の災害を何度もみてきた。今回の新型コロナウイルス禍も、そのひとつである。その度に、乗り越えてきた。新しい習慣を取り入れて、現在がある。
時代は、いつも大きな変化が先にある。それに伴うテクノロジーがつくる事実が先に生まれる。その事実に順応していくのが人間であることを、身体で熟知しているのがシニア世代であるとしたなら、間違いなく働き方もニューノーマルに適応していく。
経済的にみても、労働力の観点からも、シニア世代のマーケットは大きい。ペンシルのSFOラボは、さらに、その可能性を追求していきたいと思う。